こんばんは、お疲れさまでっす!
涼ちゃん、いらっしゃい!
こんばんは、洋平です!
あら、洋平さんも!
お久しぶり、お元気でしたか?
はい、おかげさまで!
波さん、まずは生ビールを二つお願いします。
マスター、生2丁!
はい、生ビールお待たせしました。
乾杯!お疲れさま~
乾杯~、お疲れさまでした!
ぷはーっ。
年度も替わって年号も改まって、ビールもなんだか新鮮っすね!
そうね、なんだか新鮮な気持ちになるわね。洋平さんはもう仕事には慣れた?
はい。専門用語はだいぶ覚えたけど、令和もまだまだ勉強の時代になりそうです!
(第10話「おそばへようこそ」参照)
あらあら、それは大変ね!
波さん、洋平くんはね、先日の「安全衛生大会」で若手を代表して発表したんですよ。
私も負けないように勉強しなくちゃ。
すごいわね!ところで「安全衛生大会」って何かしら?
はい。安全衛生大会は、私たちの職場・現場の安全と、健全な働く環境を守るために、仕事に関わるみんなが集まって意識を高め、互いに学び合う場なんですよ。
って社長が言っていました!
洋平くん!余計なことは言わなくていいから、ってその通りなんだけど。
なるほど。現場でのお仕事だけじゃなくて、そんな取り組みもしているのね。
はい。安全で健全な現場は、働く私たちのためはもちろん、お客様の安心にも直結しているから決しておろそかにしてはいけないんですよ。
それも社長が言っていました!
よ・う・へ・い・く・ん
てへへ。マスター、今日は何かおいしいものはありますか?
涼子さん、洋平さん、いらっしゃいませ。お二人とも頑張っていらっしゃるようですね。
今日は「沖縄そば」はありませんが、そのかわりに「つみっこ」という、すいとん料理を用意しています。
素朴な味でお腹もふくれますからお召し上がりになりませんか。
「つみっこ」だなんておもしろい名前ですね。それをお願いします。
お願いします!
マスター、つみっこ二つ!
お待たせしました、つみっこです!
うわー、おいしそう!僕、こういう野菜たっぷりの汁物好きだな~。
(ごくり)いい味、出してますね~!
うーん、いい匂い!この白いのが「つみっこ」かしら。
(ごくり)甘いというかウマイというか、やさしい味っすね!
その白いのは小麦粉を水で練ったものなんだけど、練った小麦粉を摘み取るようにちぎって鍋に入れるから「つみっこ」って言うんですって。私もさっきマスターから聞いたばかりなんだけど。普通は「すいとん」って言うわね。
つみっこだなんて可愛いっすね。どこかの方言かしら?
涼子さん、おっしゃる通りです。
つみっこは「摘み取る」様子をあらわした埼玉県の方言です。特に養蚕(生糸を取る蚕の生産)が盛んだった地域で、練った小麦粉をちぎるのを、蚕の食べる桑の葉を摘み取る様子になぞらえて「つみっこ」と呼ぶようになったそうです。養蚕や機織りが盛んだった地域で、仕事の合間に食べられた郷土料理だったんですね。
なるほど、これもふるさとの味なんだ。それにしてもいい味付けしてますね。さすがはマスター!
洋平さん、実はたいした味付けはしていないんですよ。小麦粉は少しの塩と水で練っただけですし、お汁もダシの他は醤油だけです。あとは季節の野菜を煮込んであるだけですよ。
意外だな~、なんかずいぶん甘いというかウマイというか、やさしい味がしますね!
洋平くん、それさっき私が言ったことだから!
てへへ。
ほんとね、シンプルな味付けなのにずいぶんとうまみが凝縮しているようだわ。
埼玉県は昔から小麦の栽培が盛んで、地粉とよばれる良質な小麦粉が生産されています。また、野菜の栽培も盛んで、ねぎや里芋、小松菜、白菜、ゴボウなど、季節ごとに風土にあった野菜が採れます。つみっこは、それらの良さを一番理解している生産者の方が育んできた郷土料理ですから、シンプルでも、手塩にかけて育てた素材のうまみをバランスよく引き出しているんでしょうね。
どんなに一流の味付けや調理方法を学んでいても、思いが込められた素材とのバランスがとれなければ、本当においしい料理は提供できないということだと思います。私も勉強させられますね。
なるほど。父ちゃんはそういうことを言っていたのか。
社長、料理の話なんかしてましたっけ?
うん、私たちは専門用語や施工技術なんかを勉強しているけど、それをバランスよく活かせるようにならなくちゃいけないってことかな。塩からいから砂糖を入れるとか、甘いから塩を入れるとか、そういうことではだめってことよね。
う~ん、マスターどういうことでしょう?
はい。どんなに高い知識や技術を持っていても、安全がおろそかになっていては働く本人はもちろん、施主や地域の方に安心は提供できません。反対に安全が確保されていなければ、せっかくの知識や技術が十分に発揮されず、本人も施主も十分な満足を得ることはできないでしょう。
技術と安全が高いレベルでバランスよくかみ合って、初めて現場とお客様の双方に安心と満足が提供できるということではないでしょうか。
なるほど、「安全衛生大会」ってそのためのものだったのね。
うん。現場で働く人たちへの安全衛生教育は法律でも定められているんだよ。
【安全衛生教育とは】
安全衛生教育は実際の作業場で災害を起こさないことを目的に、法定ならびに事業者独自で様々な視点から行われています。 主なものには、
①労働安全衛生法にもとづく安全衛生教育
・安全管理者等に対する教育(第19条の2)
・雇入れ時の教育(第59条第1項)
・作業内容変更時の教育(第59条第2項)
・危険又は有害な業務に従事する者に対する特別教育(第59条第3項)
・新たな職務につくことになった職長等に対する教育(第60条)
・危険又は有害作業従事者の教育(第60条の2)
②一般的な安全衛生教育(事業者独自の教育)
・労働安全衛生法及び関係法令や規制についての一般的な知識
・社内安全衛生規則や基本ルール、安全心得
・職場における一般的な安全衛生知識
・職場独自の安全衛生の知識
・異常時の処置ルール及び災害発生時の対応方法
③安全衛生大会
・協力会社と合同で安全衛生管理手法や活動事例などを報告、好事例等を共有
などがあり、施工技術のみならず、安全衛生知識の習得・体得を図り、より高い安心・安全を提供できるよう事業者は日々研鑽しています。
なるほど。安全・安心のために色々と見えないところで努力しているのね。
洋平さん、ますます勉強の時代が続くわね。
そういうことか!僕もつみっこのような、やさしくて安全・安心・味のある仕事ができるよう頑張ります!
父ちゃんも「今年は時代の変わり目、成長してチャレンジの年」だって言っていたからね。
よーし、二杯目にチャレンジだ。マスター、つみっこのお代わりください!
あらあら、洋平さん、チャレンジと成長の意味が違うんじゃないかしら!?
洋平くんチャレンジャーだなぁ。私も負けないようにしなくちゃ!
げっぷ。つみっこうまかった~。食べ過ぎでまた成長しそう、、。
マスター、つみっこも評判よかったですね。
今度まかないで作ろうか?
(汁物はつまみ食いしにくいからね!)
<第17話 完>
※本ストーリーはフィクションであり、実在の人物・団体との関係ありません。