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第16話 「ぶり大根と固めた思い」

(ガラガラ~)

あら、滝沢くん、いらっしゃいませ!
お久しぶり、今日も寒かったわね!

お久しぶりです、、。

すぐにご飯を食べる?それとも何か飲みましょうか?

では、生ビールを、、。

(ガラガラ~)

こんばんは~!いや~、寒いね~!こうも寒いとまいっちゃうね。いやはや!

いらっしゃいませ!沢辺さん、どうぞお座りください。今日は温かいお酒にしますか?

いやいや、寒いけど乾燥しているからね、まずはビールでのどを潤わさなくちゃ

マスター、生2丁!

おっ、滝沢青年、久しぶりだね!元気にしていたかい?

はい、おかげさまで、、。

それは何より!

生ビールお待たせしました。

では滝沢くん、乾杯~!

乾杯、、!

(ぐびぐび)

ぐはー、やっぱりいつ飲んでも生ビールはうまいねぇ。

沢辺さんもお久しぶりでしたね。最近お忙しいんですか?

うん、これから年度末に向けてね、だんだん忙しくなるよ。それから前にも話した管理棟のタイル壁の補修(第5話「肉じゃがはお袋の味」参照)、そろそろ具体的に考えなくちゃいけないんだ。

色々と大変なんですね。

そうなんだよ。色々とご意見もあってねぇ。

ご意見って、、?

おっ! 滝沢青年、よく聞いてくれたね~。
実はね、古くなってきたタイル壁が剥がれて落っこちてきたら危ないから何とかしなくちゃいけないんだけど、その方法について色々と意見があるんだよ。

予算の問題ですか?前にもそんなことおっしゃっていましたね。

うん、それもあるよ。それでマスターから費用を抑えながら全面補強とイメージ刷新ができる工法を教えてもらったんだよね。
コロッケが何とかっていう工法。(第5話「肉じゃがはお袋の味」参照

MA(モダンアート)ストーン工法ですね、、。

それそれ!滝沢青年、よく覚えているね!

はい、、。

でもね、今回は予算の問題ではなくて、今の壁面を残したいっていう話なんだよ。

どういうことですか?

実は今のタイル壁面というのがね、そのころ地元で開かれた大きな体育大会を記念して地元の小学生が考えた図案をもとに作られたものなんだよ。だから単に新しく貼り替えたり覆ってしまうんじゃなくて、そのまま残したいっていう意見が出てきているんだ。

なるほど、それは大変ね。

そうなんだ。補修と意匠の保存の両立を図らなくちゃいけないんだよ。

あら、難しいことおっしゃるんですね!

てへへ、そう言われただけなんだけどね。ところで今日の食べ物のおすすめは何があるの?

沢辺さん、滝沢さん、いらっしゃいませ。お寒いなかありがとうございます。
今日はぶり大根がおいしく炊けていますのでお召し上がりになりませんか。この時期のぶりは特別です。温まりますよ。

いいねぇ、ぶり大根!いただくよ!

僕も、、。

承知しました!滝沢くんはご飯も一緒に食べるわね?

はい、、。


お待たせしました!ぶり大根です。大根が熱いので気をつけてお召し上がりくださいね。

はふはふ!味のしみた熱々の大根が喉もとをすっと通って、その後を冷たいビールが追いかける、たまんないねぇ!

もぐもぐ、、。ご飯とよく合います、、。

でも、なぜこの時期のぶりは特別なのかな?

はい、ぶりは成長するにしたがって名前の変わる代表的な出世魚です。
大きさや地方によってハマチやイナダなどと呼ばれる時期もありますが、特に冬の富山湾で水揚げされる脂が乗って大きく成長したぶりは「寒ブリ」と呼ばれ、高級魚として扱われています。その寒ブリを大根と一緒に煮ることで、ぶりの脂が煮汁に溶け出し、その脂のうまみを大根が吸収しておいしく煮あがるのです。

なるほど、この時期だけのぜいたくな煮物ってことだね!

そうです。富山の寒ブリは江戸の昔から海のない山間部まで運ばれていて、年越しの縁起物として珍重されていたそうですよ。

富山の寒ブリ、お正月に実家で食べました、、。

あら、滝沢くん、ご実家に帰っていたのね。どちらだったかしら?

長野県の松本です、、。

おっ、まさに海のない山間部だね!

はい。海は無いですが、暮れには毎年富山の寒ブリがたくさん市場に並ぶんです。それを正月に照焼にして家族みんなで食べます、、。

うーん、脂の乗った照焼もうまそうだなぁ~!

滝沢さんの故郷の味ですね。
今日は照焼はありませんが、サービスでこんなものを作ってみました。お召し上がりになってみてください。

なんだろう、ゼリーのような。

煮凝り、、?

滝沢さん、おっしゃる通りです。煮凝り(にこごり)です。
煮凝りは、ゼラチン質を多く含む魚や鶏肉、豚肉などを煮た際の煮汁が冷えて固まったものです。

う~ん、口に入れるとトロっと溶けておいしいねぇ。これはもしかするとぶり大根?

沢辺さん、正解です。
ぶり大根の煮汁も冷めるとぶりから溶け出したゼラチン質が固まります。そこで、何度も温め直してぶりや大根の身が崩れ出た煮汁に、大葉(青じそ)を刻んだものを加えて固めてあります。固まりがゆるい時は、粉のゼラチンを少し加えたりもしますね。

ゼラチンはコラーゲンからできているから美容にもいいんですよね!

そうだね。コラーゲンは肌のハリ、爪・髪の毛のツヤの他、関節や骨を若々しく保つ役割を果たすタンパク質なんだ。特にビタミンC、鉄、亜鉛を含む食品と一緒に摂ると効果が高いと言われているので、それらを多く含む大葉を刻んで入れてあるんだよ。香りもいいしね!

おいしいです、、。

煮崩れた身もきれいに固まってきれいだねぇ。
大葉の緑も映えて、見た目にもおいしい料理に変身だ!

ありがとうございます。
先ほど沢辺さんがお話しなされていたタイル壁も、新しく貼り換えなどしなくても、そのままきれいに変身させられますよ。

本当!?古いタイルをそのまま残せるの?

はい。既存タイルの風合いや意匠を残しながら、将来にわたってタイルの剥落を防ぐことができる工法があります。(ボンド アクアバインド工法

マスターの豆知識

【ボンド アクアバインドの工法】

(1) 既存タイルが劣化して剥がれ落ちる前に、特殊なステンレスアンカーピンで、タイルの上から建物躯体に対し直接固定。(一定間隔で壁面全体を固定。アンカーピンの頭(CPキャップ)はタイル色に調色するため目立たない)

(2) (1)の上から、透明なウレタン樹脂・アクリルシリコン樹脂で3層に壁面全体を塗り重ね、建物躯体・タイル壁面を一体化。

【メリット・デメリット】

メリット:既存タイルの風合い・意匠を活かしながら、将来にわたって外壁タイルの剥落防止が可能。部分補修では必要となるその後の定期的な点検・メンテナンスのコストが抑えられる。

デメリット:従来の部分補修よりも高コスト。剥落防止を目的とした工法のため、すでに剥落のある場合は該当箇所を先に補修しておく必要がある。

【第三者賠償責任保険制度】

工事完成後10年間、タイルの剥落事故など第三者に対して発生した賠償事故に対し、最高2億円(免責20万円)までの保障が受けられる第三者賠償責任保険が付保されている。

なるほど!補修と意匠の保存の両立ができるんだね。

今日の煮凝りみたい!時間をかけた風味や味わいを閉じ込めてきれいになるなんて!

波ちゃん、あいかわらずうまいこと言うね!

滝沢さん、ご飯のおかわりをなされませんか?熱々のご飯に煮凝りを載せてもおいしいですよ。

滝沢くん、久しぶりなんだからたくさん食べていってね。はい、おかわりどうぞ!

ありがとうございます、、。

(もぐもぐ)

あっ、溶けた煮凝りがご飯にからまっておいしいです!なんだかなつかしい味、、。

ゼラチンは温まると溶けますからね。閉じ込められていたぶりと大根の旨みがあふれてきます。
もちろん、ウレタン樹脂やアクリルシリコン樹脂が溶けるようなことはありませんけどね!

それなら安心、安心!

煮凝りからは故郷の味が溶け出してきたようね!

はい、頑張ります、、!

よーし、もう一度乾杯だ~!


(帰り道)

今日のぶり大根もうまかったな~。ところで滝沢青年、何を頑張るって言っていたっけ?

頑張ろう!でも、実家に帰っていたこと、マスターご存知だったのかな、、?


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滝沢くんおいしそうにぶり大根を食べていたわ。
ご実家でもぶりが食べられてよかったですね!

ぶりは年取りの縁起物で出世魚だからね、親心かな?
(ぶりを食べて仕事を頑張りなさいって!)

<第16話 完>

※本ストーリーはフィクションであり、実在の人物・団体との関係ありません。

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