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第10話 「おそばへようこそ!」

あれ!今日はいつもと違ういい匂いがするね?

沢辺さん、いらっしゃいませ! いい匂いでしょう!?

いらっしゃいませ、沢辺さん。今日はちょっと特別なスープを仕込んでいるんですよ。
あとでお出ししますのでお楽しみにしてください。

なんだろう!?楽しみだね!では、とりあえず生ビール!

マスター、生一丁!

ガラガラガラー!

お疲れさまでっす!

あっ、涼ちゃんいらっしゃい!

おー、いい匂いがしますね!今日は新人君を連れてきましたよ!

こんちは!洋平です。よろしくお願いします!

洋平さん、いらっしゃいませ。お二人とも生ビールでいいですか?

はい!

マスター、生追加で二丁!

洋平くんは涼ちゃんの会社の新人なの?

そうなんです、まだ入社して一ヵ月なんです。

洋平です、よろしくお願いします。

沢辺です、よろしく!じゃあ、みんなで乾杯だ!

乾杯~!

洋平くんは建築の仕事は初めてなの?

はい、まだ始めたばかりでわからないことだらけなんです。
言葉の意味からわからなかったりして。

専門用語ってやつだね。

そうなんです。
私だってまだまだ初めて聞く言葉もあったりして、日々勉強ってやつですよ

今日も現場で色々と教えてもらったんです。
沢辺さん、「ふみづら」とか「おどりば」とか分かりますか?

がははは!これでも僕は体育館施設の管理をやっているからね!それくらいはわかるよ。
「踏み面」(ふみづら)は階段の足を乗せる部分で、「踊り場」(おどりば)は階段の曲がり角なんかにある広くなったところだよね。

マスターの建物豆知識

「踏み面」(ふみずら)

階段の足が乗る部分。建築基準法の規定では住宅(共同住宅の共用階段を除く)の階段は15センチ以上、学校や公共施設などの階段は26センチ以上の長さ(奥行き)が求められている。

「踊り場」(おどりば)

階段の途中にある広い部分で、方向転換などに使われる場所。方向転換のない階段でも、住宅の場合は高さが4メートルを、学校や公共施設では3メートルを超えると途中に踊り場を設けなくてはならない。

さすが沢辺さんです!
では、「けこみ」や「ささらはばき」はわかりますか?

うーん!?ぐびぐび。生おかわり!

マスター、生追加一丁!
沢辺さん、降参ですね!?

うん、てへへ。「けこみ」だなんてなんだろう?

「蹴込み」(けこみ)は踏み面の先のところで、「ササラ巾木」(ささらはばき)は階段の足元、左右の壁に取り付けてある板やカバーのことですよ。

マスターの建物豆知識

「蹴込み」(けこみ)

階段に足を乗せたときにつま先が当たりそうになる箇所。踏み面の奥の垂直に立ち上がった部分や、その空間を指す。

「ササラ巾木」(ささらはばき)

階段の左右の足元に取り付ける、壁面を保護するための板や樹脂のカバー。巾木とは壁面の下方、床面と接する場所に、壁面の保護や壁面と床面の接合部分を隠すために取り付けられる水平材を指し、その中でも階段に取り付るものを特にササラ巾木と言う。

いや~、ちょっと知ったかぶりをしちゃったけど、階段に関するものだけでも色々と専門用語があるんだね。

そうなんです。知らないといちいち先輩に聞かなくてはならないし、そうすると仕事を止めてしまうことになるので早く覚えないといけないんですよ。

でもうちの父ちゃんは、言葉を覚えるのも大切だけど、知らなかったということを忘れないのも大切だって言うよ。施主のお客様は専門用語に詳しくないんだってことを忘れるなって。

そうね。専門用語でどんどん話されると本当に自分が理解している通りなのか心配になっちゃうわね。

お互いに専門家同士ならより正確な意思疎通を図るために専門用語は必要だけど、一般の人にはわかりやすくしないとね。
このまえ聞いた品質の表示の話なんかもその一例だよね。(第9話「安心は信頼から」参照

みなさんお待たせしました!
今日は特別に「沖縄そば」を用意していますのでお召し上がりください。

えー! やっぱりこの匂いは沖縄そばだったんだ!!

おー、いい匂い!
でも、またなんで沖縄そばなの?

はい。実は今日お出でいただきました洋平さんは沖縄のご出身なんです。
涼子さんから頑張っている新人の洋平さんを応援したいというお話を聞きまして、今日は特別に沖縄そばを用意をして涼子さんに洋平さんをお誘いいただいたんです。

そうだったんだね!

涼子さん、ありがとうございます!感激です!!

はいはい、みなさん熱いうちにお召し上がりくださいね!


ズズズー、ちゅるちゅる

マスターうまいっす!故郷の味です!

ほんとおいしいわね!毎日食べたくなっちゃう。

これはやみつきになっちゃうよ。スープはどうやって作っているの?

はい。沖縄そばのスープは、豚肉をじっくり煮込んでとったスープに鰹だしを合わせて作ります。それに塩で味付けをし、醤油で味をととのえるといった感じですね。
だしをとったあとの豚肉は、醤油、酒、みりん、砂糖で煮込んでトッピングとして麺の上にのせてあります。紅しょうがを加えるのも沖縄そばの特徴かもしれませんね。

なるほど、シンプルだけどおいしいよ。

でも、どうして「そば」って言うのかしら。これはラーメンじゃないのかしら?

波ちゃん、よく気がつきましたね。厳密に言うと沖縄そばの麺にはいわゆる「蕎麦」は入っていなくて小麦粉100%だから、本当は「そば」(蕎麦)とは呼称できないんです。

えー、そうなんだ。

はい。しかし、昔から沖縄では「そば」と言えば沖縄そばのことを指し、私たちが「蕎麦」と呼んでいる蕎麦粉から作る麺は、日本そばなどと呼んで区別していたそうです。

地域によって違いがあるのね。

しかし実際に蕎麦粉が入っていないのに「そば」と言うことに対して公的機関からクレームがついたこともあったんです。

たしかに、蕎麦を使ってないのに蕎麦っていうのは誤解を招くかもしれないね。でも材料に関係なく沖縄では昔から「そば」って呼んでいたんでしょ。

はい。おっしゃる通りです。
それで1978年に「本場 沖縄そば」という表記が特殊名称として正式に認可され、認可された10月17日は「沖縄そばの日」とされているそうですよ。

原則にこだわった専門用語ではなく、より一般になじみのある言い回しが採用されたという訳ですね。

なるほど!うちの社長が言っていたのもそういうことか。
専門用語に頼るのではなく、よりお客様にイメージしてもらいやすい言い方を忘れるなということなんだ。

おっ、洋平くん、いいこと言うね!

いえいえ、てへへ!

では洋平くんの前途に乾杯~!

乾杯~!!

(帰り道)

なんだか今日は楽しかったな~。沖縄そばも食べられたし。明日も頑張ろうっと!

洋平くん、よろこんでくれてよかったな~。私も負けないように勉強しなくちゃ!

今日の沖縄そば、いい味出していたな!若者よ、がんばれ!!


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沖縄そば、よろこんでもらえてよかったですね!

うん。(食べたくなったらまたいつでもおいで、、!)

<第10話 完>

※本ストーリーはフィクションであり、実在の人物・団体との関係ありません。

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